こどもたちのいじめられているという相談を受けていますと、こどもたちが何に不安を感じているか、こどもたちが何に恐怖を感じているかというと、それは「今ある自分の居場所を奪われること」であると臨床上は感じています。一般の会話であれば、「そんな友たちはこちらからお願いさげだ。別の友だちを見つければいいんだよ!」というようなアドバイスもありましょう。しかし、いじめられている当事者は、その場所、そのスペースを奪われないように必死になっているように思われます。また、いじめられているこどもの保護者の方が、「うちの子がなんで、別室や学校を休まないといけないのですか。いじめた張本人を別室に通わせたり、学校を休ませればいいじゃないですか」という訴えをされることも多いです。これはいじめたこどもも学校で教育を受ける権利があるので、よっぽどの人身安全上の事由がない限り実行はできないだろう。
 臨床上では、居場所を奪われたこどもたちは、人から傷つけられたけれども人と繋がりたいという気持ちを表明していることは少なくないものです。いじめられてしまう場所には行きたくないけど、人との交流は保っていたい、これは理屈で説明できることではなく、「人ってそういうもんだ」という水準ものでしょう。いじめの問題の解消以上に、いじめられたこどもたちが安心して人と交流できる居場所やスペースを作ることがもっとも重要なことではないかと思います。

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