不登校やひきこもりの治療で全国的に知られていた医療機関で長らくカウンセラーをしておりました。その医療機関の院長を筆頭にスタッフたちが総出で、社会的ひきこもりの様態を知るための全国調査を行いました(こちらはすでに絶版ですが、書籍になっています)。ミレニアムブームの頃あったと思いますが、「社会的ひきこもり」という概念がアパシーという言葉を塗り替えていくような頃でした。当時の不登校やひきこもりの相談やカウンセリングは、青年期前半(おおむね高校生くらいから大学入学後7,8年くらい)の若い人が多かった印象です。実際来院された若い人の状態像は、一見すると気の良い青年ですが、家庭内の様子は不登校やひきこもり状態かつ、親子関係の不味さ(親御さんが一方的に怒られる)か家庭内暴力が併存していました。まずは親子関係の修復がカウンセリングの第一歩であったように思います。その親子関係の不味さは、親御さんのこどもさんや若い人への関わり方やコミュニケーションの仕方の不味さではなく、ご本人自身の世の中(もしかしたら同世代)への不満を依存対象である親御さんに八つ当たりしているかのように思われました。                                                                                                                                                                                                                                                                
 翻って最近のこどもさんや若い人と親御さんとの関係性がどのようなものになっているのでしょうか?今時は、親御さんが一方的に怒られるとか、家庭内で親に対して荒れる、暴れるといった親子の状態はかなり少なくなったのではないでしょうか?実はここに親子関係を修復することの最近の難しさがあります。こどもさんや若い人が喋らない。言葉を発しない。行動で表さない。しかし親子関係の亀裂は進んでいっていることがなんとなくわかる。ただしこの時点でご相談やカウンセリングを受けられる保護者のかたは少ないように思います。もっと事態が悪い方に向かって大きな問題が起きてからやっと、「相談でも行った方っがいいかしら…」と保護者のかたが動き出すのだと思います。ですから親子関係の修復よりも、今のトラブルを解決する方が先になるのですね。しかしこのトラブルを解決することに集中すると、水道管ゲームのようにどこかで水漏れを起こします。やはり親子関係の修復も並行して行わないとならないのです。
 親子関係をどう修復するか?それは何か関係が悪くなったかなあと思う地点まで戻ってみることです。これが実はなかんか難しいことです。なぜ難しいか?親御さんは決してこどもさんを悪くしようと思っていたわけではないので、こどもさんがSOSを出していた地点には全く気づかないことが多いからです。ここは相談員やカウンセラーの先生と一緒にやっていくべきところでしょう。
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