高校生や中学生のクリニックや民間相談機関を探している時、保護者のカウンセリングまたは保護者の相談という表現があって、どっちなのという疑問があるかもしれません。言い方の違いと捉えることもできますし、それよりは少し意味の問題が含まれているとも言えます。今回は意味があるということを考えてみましょう。
①高校生や中学生のこどもさんの抱えている問題を解決するために、保護者のかたが相談(カウンセリング)を受ける
ということと
②問題を抱えている高校生や中学生のこどもを持つ保護者の方が、こどもへの関わり方と保護者のかたの考え方や行動と関連があると思っていて、保護者のかたの考え方や行動を変えたいので相談(カウンセリング)を受ける
ということがいささか違う(ところがある)、ということです。
実は相談員やカウンセラーでもここのところが実際のプロセスで曖昧になっている場合もあるのです。もっとも相談ベースでお話をおうかがいしているプロセスの中で2回から3回くらいは、「どうも親御さん自身のカウンセリングだなあ」と思えることはあるでしょう。それがいけないと言っているわけではありません。しかしながら、相談員やカウンセラーそしてセラピストは、本来、この違いに敏感である必要があると思います。それは、主訴に対して相談やカウンセリングを続けさせる要因が違ってしまうことになるからです。保護者のかたが「あーそうだったのか」というような、例えば保護者の心の傷つきへの気づきを得ることはありましょう。しかしながらそれが相談やカウンセリングのメインテーマのようになると、こどもさんや若い人の問題があまりに難しいのでそれを見て見ないふりになったりするのです。保護者のかたの心の傷つきへの気づきは重要であっても、結果としてそのことがメインテーマになってしまう(気づかずにメインテーマになってしまう)と、必ずこどもさんや若い人が抱えている心の問題を見失います。ここは保護者のかたが悪いわけではなく、相談員やカウンセラーの進捗管理の問題です。
もし保護者のかたの心の傷づきが、こどもさんや若い人の問題を見えにくくしてしまう兆候があったら、相談員やカウンセラーは「これ以上はお母さんご自身の(お父さんご自身の)カウンセリングになっちゃうから、この話はそこら辺にしておいて、そのこととこどもさんの問題との関連を見ていきましょう」というような交通整理が必要なのです。すなわち、一見、保護者のかたの心の傷つきが語られることは大変良いことのように思われますが、実はその陰でこどもさんや若い人の問題は見て見ないふりになっており、その二重構造自体が、こどもさんや若い人が今困っている状況のネガフィルムである場合が(よく)あるからです。「これ以上はお母ご自身さんの(お父さんご自身の)…」というやりとりがなされずに、どっぷりと保護者のかたの話になっていて、それが繰り返し続けられている場合は、いろいろな意味で一度立ち止まってみると良いかもしれません。以前の記事に書きましたが、プロは時間短縮に責任を追っています(ファストにインスタントに問題を解決できるという意味ではありません)。少々嫌な言い方ですが、だらっと続けている場合、だらっと続けてしまっていて必要な引き算と補助線を引いてもらっていない場合が多いものです。もちろん保護者のかたご自身のカウンセリングなら問題ではありません。
横浜思春期問題研究所付属相談室『横浜保護者の相談室』では、私立中高一貫校の中学生、公立・私立の高校生の相談やカウンセリングを神奈川県横浜市港北区と神奈川区でお引き受けしています。オンライン形式の面談も可能ですから、全国各地のご相談やカウンセリングもお引き受けしています。